窓枠が枠の形をなさずして蝶がなだれてくるかの光
『第十七回与謝野晶子短歌文学賞』青春の短歌・高校生の部入選
青空に面した大きなガラス窓指紋の数だけある物語
『NHK短歌テキスト2013年7月号』佐伯裕子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「空港」佳作
あの人が他の女を呼ぶ声を消すためせっせと便器を磨く
『NHK短歌テキスト2013年11月号』斉藤斎藤欄・テーマ「トイレ・洗面所」佳作
「東京」で起きた事件は何区でも何市でも君が心配になる
『NHK短歌テキスト2013年12月号』佐伯裕子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「東京」入選
君越しに見た雲ひとつない空の青さを求めて絵の具を混ぜる
『NHK短歌テキスト2014年4月号』斉藤斎藤欄・題「空」佳作
ファッション誌読むふりをして鏡越しに働く君の姿を見てる
『NHK短歌テキスト2014年4月号』佐伯裕子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「美容室」佳作
リズムよくペダルを踏みし君の足ばかり見ており子犬のワルツ
『第14回若山牧水青春短歌大賞 』佳作入選
一段目おかずコーナーに焼うどん二段目白米君の弁当
『NHK短歌テキスト2014年8月号』梅内美華子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「弁当・給食」佳作
ワイシャツの背中を濡らし自転車と夕焼け色の風になる君
『NHK短歌テキスト2014年9月号』梅内美華子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「自転車・車」佳作
あなたへのお土産になるペンギンの缶が欲しくて買ったクッキー
『NHK短歌テキスト2015年1月号』梅内美華子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「旅行」入選
暗がりに「あの青」を見る同郷のバンドマンいま海を歌えば
『NHK短歌テキスト2015年2月号』梅内美華子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「音楽」佳作
真夜中の待合室で目をこするあともう少しで会える「いもうと」
『NHK短歌テキスト2015年3月号』梅内美華子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「家族」佳作
まわりより少しだけ早く春が来るサーモンピンクのフレアスカート
『NHK短歌テキスト2015年5月号』梅内美華子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「ファッション」胸キュン大賞
教科書の「代数編」と「幾何編」が男雛と女雛のような本棚
『NHK短歌テキスト2015年6月号』染野太朗欄・題「何」佳作
誰にでも夏は明るいわけじゃないひまわり畑に隠れて泣いた
『平成27年度NHK全国短歌大会』自由詠秀作(玉井清弘選・永田和宏選)
カチカチのフランスパンをふたりぶん丁寧に切る昨日はごめん
『NHK短歌テキスト2016年2月号』佐伯裕子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「パン」佳作
晴天をてるてる坊主の勝利だと笑うあなたと作るおにぎり
『NHK短歌テキスト2015年6月号』染野太朗欄・題「勝つまたは負ける」佳作
朝に降る流星のようやわらかくきみがサラダにまぶすクルトン
『NHK短歌テキスト2016年4月号』佐々木幸綱欄・題「サラダ」佳作
春が来ればかつおぶし踊るたこ焼きをわけあう帰り道もおしまい
『NHK短歌テキスト2016年4月号』染野太朗欄・題「おどる」二席
あなたにも誰かをねたむ日があると知り甘くなる深夜のココア
『NHK短歌テキスト2016年4月号』栗木京子欄・題「ねたむ」
こんなにも広かったのかこの部屋はすべての家具を運び出されて
『NHK短歌テキスト2016年4月号』佐伯裕子欄(短歌de胸キュン)・テーマ「家具」佳作
よく晴れた川辺にふたり八月に生まれたきみはブルーが似合う
『詩の街ゆざわ2016』佳作
昼下がりわたしを文字に変えていく精神科医の右手の動き
『平成28年度NHK全国短歌大会』自由詠佳作(伊藤一彦選)
ふわり浮く身体 あなたは軽々とひとりの女を春風にする
『平成28年度NHK全国短歌大会』題「風」佳作(俵万智選)
唐突に壊れてしまったスマートフォンなかのあなたともう出会えない
『平成28年度NHK全国短歌大会』自由詠入選
わたししか知らないきみの変なダンスきっと求愛行動だろう
『平成29年度NHK全国短歌大会』自由詠佳作(大松達知選・俵万智選・穂村弘選)
葉牡丹をきれいなきゃべつと呼ぶきみと今日はとんかつ食べに行こうか
2018年2月12日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄1首目/第139回日報歌壇賞秀逸
ランナーが来るより先に押し寄せる拍手と声援大波のごと
2018年2月26日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
しあわせはふたりで作るぴったりとシチューの鍋に蓋をあわせる
『第20回あなたを想う恋のうた』秀逸
軒下でミモザの花咲く鉢植えと並び眺める春雨の街
2018年4月16日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
受話器から聴こえる遠い街並みは同じ地球じゃないみたいだね
『NHK短歌テキスト2018年5月号』黒瀬珂瀾欄・題「同じ」佳作
花色の口紅を引く雨の朝雨にもわたしは誇らしく咲く
2018年5月14日『新潟日報読者文芸』馬場あき子欄
コーギーを抱えるように食パンを抱いて越後の畦道を行く
2018年5月14日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
「香香」と予定を書けば昔行った動物園の匂いが浮かぶ
2018年5月28日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
新緑のカーブをやさしく曲がるバス「実習中」の札を掲げて
2018年6月10日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
枇杷色の薄い皮剥き六月に指の先から近付いていく
2018年6月25日『新潟日報読者文芸』馬場あき子欄
風光る少し高めのポニーテール
『第29回伊藤園お~いお茶新俳句大賞』都道府県賞
体温を想像しながらじっと見るテレビの中でなされる握手
2018年7月8日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
湖に浮かぶ満月手に入れるように缶から掬う黄桃
2018年8月20日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
フーコーの振り子が新潟でも振れてここも地球の上だとわかる
2018年8月27日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
きみとなら些細なこともよろこびだプラムは赤い宝石のよう
『詩の街ゆざわ2018』佳作
子のいないあなたが自分の飼い猫に一度だけはと許す出産
『NHK学園市川市短歌大会』入選
ばんばんじ~ばんばんじ~と名曲を生み出しながらきゅうりを刻む
2018年9月24日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄1首目
用紙から大きくはみ出た書のような寝相で眠る真っ黒な猫
2018年10月29日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
便箋にとめ・はね・はらいしっかりと星座のように浮かぶきみの字
2018年11月19日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄1首目
あぜ道で新幹線に手を振る子見えないだろうけど振り返す
2018年12月17日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄1首目
助けてと叫ぶみたいに大口を開けたはたはた大事に食べる
2019年1月7日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄2首目
「すみれ」との二択で選ばれた名前を婚姻届にしっかりと書く
2019年1月14日『新潟日報読者文芸』高野公彦欄
(最初「丁寧に」で、途中から「しっかりと」と「はっきりと」も加えて最後まで悩んでいたのですが、やっぱり「丁寧に」にしたい気持ちが強い……)