すきによんでねブログ

たかはしりおこのなんてことないブログ

『歌人のふんどし2018』の話2

前回はタイトルのことについてのみ話しました。
nashkrkr.hatenablog.com
いよいよ読んでいきます。

まず、気になっていたタイトルや気になっていた組み合わせの作品中心に……。

逢さん『終点の先。ちいさな惑星。』(タイトル提供:郡司和斗さん)
確かに逢さんがつけそうなタイトルではないけれど、綺麗めタイトルだし、これは期待できるのでは……?と思っていた組み合わせ。逢さんはツイートを見たり作品を読んだりしている限り、電車旅とか好きそうですし。
一読した感じ、世界の終わりを迎える人々についてのファンタジー。現実世界がこんなことになったら嫌だなあとは思うのですが、作り話としてこの手の世界観がだいっすきなので「うっ……ぐっ……良い……」ってなりました。(語彙力の消失)
と、最後まで読んで、コメントを読んで、なんとこの連作どうやら言葉遊びがなされている!とわかりました。そうして読むと、まず一首目が問題文のような役割になっていて……あとは皆さんの目で確かめていただきたいのですが、ほんっとうに!ほんっっっっっとうにすごいです。ひれ伏しました。わかった瞬間のぐっとくる感じがすごい。これをわかってから一首目を読むとまた良いです。こういう言葉遊びがされている作品って大好きなんですけどあんまりやったことはないので、素直にすごいなあと思いました。絶対難しいじゃんこんなの……。

貝澤駿一さん『〈湖畔のアスパラガス工場〉事件』(タイトル提供:河村壽仁さん)
難しそうだなあと思っていたタイトル。「事件」の部分をどうすればいいのかなと思っていました。が、読んでみたらわたしが想定していた(自分だったらこんな雰囲気かなとか、こんな風に詠まれるかなとか)ものとまるっきり違う雰囲気の連作になっていました。事件性は少なめなように思います。
一首目がこの連作の世界観にぐっと引き込んでくれる雰囲気があり、好きです。

淡海わこさん『喫煙推進株式会社』(タイトル提供:宗谷燃さん)
わたしは非喫煙者(どころか嫌煙)なのでこのタイトルは詠める気がしないと思っていました。また、わこさんがこのタイトルについてご自身はタバコを吸わないという旨のツイートをしているのをお見かけして、どうするんだろう~どうなるかな~と思っていた組み合わせです。
この会社のもくもくとタバコの煙にまみれた雰囲気がこれでもかと伝わってきて、面白く読みました。この会社はこんな名前だし、五首目を読む限りオフィスも禁煙でないと思うので、四首目の「喫煙所」は会社外のことだと読みました。ってことはこの人たちは外で営業をしている。うん、本当に推進活動をしているわけですね。二首目みたいな言葉で営業をかけているんでしょうね。面白かったです。
たぶん実際に煙草を吸う人や愛煙家の方がこのタイトルで連作を作ったら、もーっと深い作品になりえるのかなとは思いましたが、それはそれこれはこれで面白かったです。

千原こはぎさん『妻のある人』(タイトル提供:せきさん)
誰の目から見てもジャストフィットふんどし、大本命だったこちらの組み合わせ。やっぱり……最高でした……。言うことなし……。
自分でも正しいことだとは思っていない、いけないことだと冷静なときの頭ではわかっていても、その理性でどうにもならない。そんな時間を繰り返してしまう。ぐさぐさくる連作です。

道券はなさん『パンダコパンダハンダゴテ』(タイトル提供:加瀬はるさん)
コメントを読んでびっくりしたのですが、先程のタバコの話とは違って、道券さん、はんだ好きとのこと!連作を読んでもよくわかりました。いや、よくわかるかはわからないですけど、はんだなんてやったことがないわたしがこのタイトルで歌を作ったら絶対にこうはならないだろうなあ、わかる人っぽいなあ、という感じ。一首目なんか特に。それが美しいです。
パンダ感は多少あるものの、パンダコパンダ感はなかったです。パンダコパンダは知らなかったかな……?

奈月遥さん『テトラポット熱いお茶』(タイトル提供:たかはしりおこ)
じわじわと湿度が高く暑い感じの連作。テトラポッドが動くこともできずにただ太陽の熱を浴びている感じがじわじわと伝わってきます。すごい、なんか読んでるだけで暑い。お茶が即座に蒸気になりそう。自分が出したタイトルですが、わたしが詠んだらもっと軽い作品になってしまったんじゃないかな、と思います。
少し脱線しますが、発行後に奈月さんとこのタイトルのことを話していて、「テトラポット」の解釈のことが話題になりました。わたしは最初からこれを正式名称「テトラポッド」の誤読としてタイトルに組み込みました。皆さん、あれ、本当はテトラポッドって言うんですよ。ドなんですよ。で、今回このタイトルで見ると、「お茶」というワードと並べたことで「(ティー)ポット」な感じに捉えたり、三角のティーバッグのイメージが浮かんだりするということを話していて初めて気が付きました。あと、奈月さんは「濁音の消失」の可能性も考えてくれたみたいで……!!すごいたくさん考えてくださってて嬉しかったと同時に申し訳なくなりました……!!
とても素敵に詠んでいただけたので、ぜひ読んでください~!

七波さん『え、まだ第三の目開いてないんですか?!』(タイトル提供:なべとびすこさん)
面白系タイトルに、正統派綺麗め短歌(とわたしは思う)を詠まれる七波さんが当たってしまった組み合わせ。わたしだったら面白側に寄って作ると思いますが、果たして七波さんは……?
すごいです、全然面白には寄ってなかったです。このタイトルでこれ詠める……?!って感じでした。「あなた」の少しミステリアスな感じがぞくぞくきます。このタイトルが「あなた」がふと言った言葉だと読んだら、ほんとこわいです。(そういう読みが正しいのかはわからないんですが)
それでもミステリアスだからこそ惹かれるというか、知りたいなって気持ちになる連作でした。

伏屋なおさん『何度でもふんどす』(タイトル提供:泳二さん)
まず、このタイトルすごく泳二さんが持ってきそうですよねえ。ふんどす #とは って感じです。さらっと面白いこと言ってく感じがとても泳二さん。そしてそんなタイトルをどうするかと思っていたのですが、なるほどそうなったか!という感じです。ぜひご自身の目で確かめていただきたい。
最初は何気ない日常のほほえましい場面……だったのですが、最後ぐっと胸にくるものがあります。同じ言葉を使っているのにな……。すごいです。

松尾唯花さん『蟹をひたすらひっくり返す』(タイトル提供:田中ましろさん)
これも当たったら難しそうだなあと思っていたのですが、(実際苦労されたかは別として)全然乱闘の痕跡(?)がなくて「えっすごい!」ってなりました。わたしだったら六首揃えたところで絶対しっちゃかめっちゃかになる……。
蟹にまつわる六首、それぞれがいいです。四首目が面白くて、リズムも好き。そして六首目が、意味こそわからないものの面白くて好きです。このタイトル、あらためてキャッチー。


さて今回はこのへんで。次も好きな作品の感想が書けたらと思います。たくさんの作品が載っていて楽しいぞ……すごいぞ……。ましろさんいつもありがとうございますの気持ちです。