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『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』(櫛木理宇/双葉社)

 

ぬるくゆるやかに流れる黒い川

ぬるくゆるやかに流れる黒い川

 

まず、6月に出版されたばかりだというのに置いてあった図書館に感謝したい……。とても面白かった。ああ~、語彙力がない。

前々回のブログで櫛木理宇作品をいくつか読んだという話をして、さらにいくつか読んだ、これで六冊目かな。うーん、うまく説明はできないのだけれど、わたしの関心事と櫛木理宇さんの書く物語のキーとなる事柄が、いつもわりと重なっているように思う。家族の話とか。で、この作品は、殺人の被害者遺族が、動機などが明らかになる前に自殺してしまったその殺人鬼の動機を調べていく物語だった。今回キーになることのひとつとして、とってもざっくり言うとミソジニーの理論があった。まあそのミソジニーそのものの理由についてまで解き明かしていくわけなんだけど……。ミソジニーについては関心があるし、その他にも過去にあった殺人事件のいくつかが引き合いに出されていて、それらがわたしも気になっている事件だったりして、だからわたしはすんなり読めたし、いろいろ考えてしまったし、この本を読めて良かったと思った。

殺人事件が起こるたび、正直わたしも他人事じゃない、と思う。それはもちろん被害者になり得るということでもあるけど、恐ろしいことに「加害者とわたしの考えに大差はないんじゃないか」と思うことだってある。理性の枠からほんの少し足を踏み外したら、わたしだって憎しみや苛立ちを抑えることができなくなるのではないか、と。その気持ちが常にあるからこそこの物語に触れることができて良かった。

正直、この物語に出てくる事柄に関心がない人が読んだらミステリーのようなトリックもないし説明くさいと感じて面白くないかもしれない。ちょっと歴史っぽい話も出てくるし。でもわたしは好きでした。櫛木作品、わたしは好きです。