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おはよう

高校一年生の初期、登校すると二番目に教室に入ることが多かった。そんなとき先に教室にいるクラスメイトはいつも同じだった。人見知りもあってクラスメイトと話すこと、特に自分から話しかけることがあまりなかったわたしでも、ある日「おはよう」と声を掛けたんだと思う。「おはよう」と声を掛けて、「おはよう」と返ってくる。そんな朝が続いた。何かを話すわけではなく、いつも、「おはよう」と言い合うだけの関係。わたしが一番に教室にいることもあって、でも彼はその次には教室にやってくる。そんなときは彼から「おはよう」と言われて、「おはよう」と返した。ほんのたまに彼以外のひとが先に教室にいることもあったけれど、そのときどうしていたかは覚えていない。

次第にわたしの登校時間が遅くなっていき、彼と「おはよう」を言い合うことはなくなった。二年生になってクラスも分かれた。

そういえば、うちの高校は三年間下駄箱の使用箇所が変わらない。多くの学校では年度ごとに場所が変わると思うのだが、卒業した三年生の場所を新一年生が使うという仕組みだった。年度が変わるたびに靴を移動させなくていい。効率的。

だから、彼とはクラスが離れてからも下駄箱で会うことがあった。ただ人見知りのわたしは一度離れるとまた距離があいてしまいがちで、その日こちらからは挨拶をしなかった。が、彼のほうから挨拶をされた。朝だったのか帰るときだったのか、つまりおはようだったのかばいばいだったのかはまったく覚えていないが、声を掛けられて、びっくりした。けれど嬉しかった。それから会うたびに挨拶をするようになった。ただ、それだけ。それ以上何かをきちんと話したことはなかったと思う。アドレスも知らない。彼は頭がいいとは知っていたが、卒業後の進路も知らない。「おはよう」のやりとりだけで少しふわっとした気持ちになったこと、それだけが残っている。