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みんな

みんな、という言葉はたいていほんとうに「みんな」というわけではない。そう前置きした上で書く。

卒業式の日、最後のホームルームで先生はいつものように淡々と話していた。すこしだけ長い話だった。教室は静かだった。他のクラスのホームルームが終わって廊下がざわついても、わたしのクラスの教室だけがとても静かだった。

卒業式の日に桜なんて咲いていない。その日だって、小雪がちらついていた。その音が聞こえそうなくらい静かだった。

生徒の顔を見ながら話をしていた先生が、突然うつむいた。

「卒業おめでとう」

絞り出すような声だった。

とても静かだった。

みんな泣いていた。

学級委員長だか日直だか、その日挨拶を担当する生徒が震える声で「起立」と号令をかけた。先生は顔を上げなかった。教室からみんなが出ていくまで顔を上げなかった。