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『月のこおり』(狗飼恭子/幻冬舎)

『月のこおり』(狗飼恭子幻冬舎)読了。
もやもやしか残らないけどなんて心地良いもやもやなんだろうというか。こんなドラマみたいなことわたしの人生になかったはずなのに、それでも共鳴してしまう。人を好きになるということ。それを恋と呼ぶということ。あとがきにぐっとくる。わたしも確かに二十歳だった。

『短歌研究2018年9月号』(短歌研究社)

短歌研究2018年9月号

短歌研究2018年9月号

第61回短歌研究新人賞発表号ということで、自分の応募作がどうだったのかを確認するために、発売日過ぎてすぐ、本屋に行きました。

30首なんて長い連作を作ったのははじめてだったし、自分でも途中でテーマが分裂しているなとか推敲したいという気持ちを持ちつつタイムオーバーで応募した作品でした。そういうわけなのでまったく自信はなかったのですが、佳作に入って五首の掲載という結果になっていました。
掲載されていたのは以下の五首でした。

目薬の一滴さえも掬えない瞳で生きることはしんどい

白米をうつむきながら噛みしめて広がっていく感情の名は

ひとりつまむぽてとちっぷす、ぷす、ぷす、と胸の風船に穴があく

道徳の授業でたったひとりだけ意見の違うただしいこども

先生の長いものさし間違えてしまった道は引き返せない

比較的お気に入りの五首でした。

この五首は30首のうちほとんど前半の歌で(道徳の歌と先生の歌が折り返しくらいの位置にある)自分としても「そうなんだよなあ、後半が駄目だったよなあ」と納得の選歌だったように思います。この結果からも自分なりにいろんなことを考えられて、とても勉強になりました。

この賞は第一次選考で四人の各選者に応募作が振り分けられ、そこだけで候補作と佳作が決められます。その性質上、どの選者に読まれるかで結果が変わってくると言われ、特に佳作なんかは運によるところも大きいと思います。誰に読まれたんだろう。とても気になるところです。選歌もその選者によって行われるので、「ああ、わたしの歌がしっくりくる人のところにいったんだなあ」と思った結果でした。

以上、わたしの応募作についての話はおわり。


受賞作二作品はすでにたくさんの人が話題にしているように、納得の同時受賞でした。そして、二人とも受賞のことばがとても良かったですね。工藤さん、川谷さん、おめでとうございました。

『宝物』(平田俊子/書肆山田)

最近図書館に通っている。図書館はいい。あの新聞もこの新聞も読み放題だし、当たり前だけど本が山のようにある。

平田俊子、という詩人のことが気になっていた。きっかけは『インヘルノ』(マツモトトモ白泉社)という漫画で平田さんの「うさぎ」という詩が引用されていたこと。

検索をかけたら新潟の図書館に平田さんの詩集はほとんどなかったが(小説や詩の作り方の本みたいなのはあった)『宝物』という詩集を見つけることができた。
どきどきしながら棚を探した。あった。「なんて綺麗な本」と思った。
綺麗な色の紙が重ねられた表紙。そこに置かれる「宝物   平田俊子」の文字。金色の文字。ぱらぱらめくると、章ごとに小さな薄い紙で仕切られていて、それが章を進むたびに少しずつ大きくなっていた。(上手く説明ができないのでまじで見てほしい)
装幀は菊地信義さん。存じ上げなかったのだが、かなり有名な人らしい(名久井直子さんしか知らなくて……ごめんなさい)
貸出カードを作って借りた。

ほんっとーにつまらない感想しか言えなくて申し訳なくなるレベルなのだが、すごい本だった。全部全部好き。詩の良し悪しはわからないのだけれど、たくさん衝撃を受けた。
「のど・か」「無縁」「皿」「富士山」というタイトルの詩が特に好きだった。あとは「カメラ」かな。
そのすべてが何気ないように始まって、気付いたら感情の渦のなかにいた。突き付けられる何かがあったり、そこはかとないさみしさがあったり、怒りがあったり、銃声が聞こえたりした。
全編声に出しながら読んだが、そうすると特に「のど・か」が衝撃的で、何回も何回も繰り返し読んだ。心を掴まれてしまう。でも「のど・か」は目で見るからこその言葉遊びも山ほどされているから、もうどう触れてもすごい詩だとしか言いようがない。
あとは「皿」がとても良くて、こちらは衝撃は特にないのだけれど、人に紹介したい詩だと思った。

素晴らしい本に出会ったなあ。現在流通はしているのだろうか。旅暮らしのような人生なので荷物を増やすことに抵抗はあるのだが、これは手元にあっても何回も読むだろうなあ。(ちなみにわたしが平田さんに出会った「うさぎ」が収録されている『ターミナル』という詩集はもうどこにもない……手に入れたい……)

機会があったらぜひ読んでみてください。

『歌人のふんどし2018』の話2

前回はタイトルのことについてのみ話しました。
nashkrkr.hatenablog.com
いよいよ読んでいきます。

まず、気になっていたタイトルや気になっていた組み合わせの作品中心に……。

逢さん『終点の先。ちいさな惑星。』(タイトル提供:郡司和斗さん)
確かに逢さんがつけそうなタイトルではないけれど、綺麗めタイトルだし、これは期待できるのでは……?と思っていた組み合わせ。逢さんはツイートを見たり作品を読んだりしている限り、電車旅とか好きそうですし。
一読した感じ、世界の終わりを迎える人々についてのファンタジー。現実世界がこんなことになったら嫌だなあとは思うのですが、作り話としてこの手の世界観がだいっすきなので「うっ……ぐっ……良い……」ってなりました。(語彙力の消失)
と、最後まで読んで、コメントを読んで、なんとこの連作どうやら言葉遊びがなされている!とわかりました。そうして読むと、まず一首目が問題文のような役割になっていて……あとは皆さんの目で確かめていただきたいのですが、ほんっとうに!ほんっっっっっとうにすごいです。ひれ伏しました。わかった瞬間のぐっとくる感じがすごい。これをわかってから一首目を読むとまた良いです。こういう言葉遊びがされている作品って大好きなんですけどあんまりやったことはないので、素直にすごいなあと思いました。絶対難しいじゃんこんなの……。

貝澤駿一さん『〈湖畔のアスパラガス工場〉事件』(タイトル提供:河村壽仁さん)
難しそうだなあと思っていたタイトル。「事件」の部分をどうすればいいのかなと思っていました。が、読んでみたらわたしが想定していた(自分だったらこんな雰囲気かなとか、こんな風に詠まれるかなとか)ものとまるっきり違う雰囲気の連作になっていました。事件性は少なめなように思います。
一首目がこの連作の世界観にぐっと引き込んでくれる雰囲気があり、好きです。

淡海わこさん『喫煙推進株式会社』(タイトル提供:宗谷燃さん)
わたしは非喫煙者(どころか嫌煙)なのでこのタイトルは詠める気がしないと思っていました。また、わこさんがこのタイトルについてご自身はタバコを吸わないという旨のツイートをしているのをお見かけして、どうするんだろう~どうなるかな~と思っていた組み合わせです。
この会社のもくもくとタバコの煙にまみれた雰囲気がこれでもかと伝わってきて、面白く読みました。この会社はこんな名前だし、五首目を読む限りオフィスも禁煙でないと思うので、四首目の「喫煙所」は会社外のことだと読みました。ってことはこの人たちは外で営業をしている。うん、本当に推進活動をしているわけですね。二首目みたいな言葉で営業をかけているんでしょうね。面白かったです。
たぶん実際に煙草を吸う人や愛煙家の方がこのタイトルで連作を作ったら、もーっと深い作品になりえるのかなとは思いましたが、それはそれこれはこれで面白かったです。

千原こはぎさん『妻のある人』(タイトル提供:せきさん)
誰の目から見てもジャストフィットふんどし、大本命だったこちらの組み合わせ。やっぱり……最高でした……。言うことなし……。
自分でも正しいことだとは思っていない、いけないことだと冷静なときの頭ではわかっていても、その理性でどうにもならない。そんな時間を繰り返してしまう。ぐさぐさくる連作です。

道券はなさん『パンダコパンダハンダゴテ』(タイトル提供:加瀬はるさん)
コメントを読んでびっくりしたのですが、先程のタバコの話とは違って、道券さん、はんだ好きとのこと!連作を読んでもよくわかりました。いや、よくわかるかはわからないですけど、はんだなんてやったことがないわたしがこのタイトルで歌を作ったら絶対にこうはならないだろうなあ、わかる人っぽいなあ、という感じ。一首目なんか特に。それが美しいです。
パンダ感は多少あるものの、パンダコパンダ感はなかったです。パンダコパンダは知らなかったかな……?

奈月遥さん『テトラポット熱いお茶』(タイトル提供:たかはしりおこ)
じわじわと湿度が高く暑い感じの連作。テトラポッドが動くこともできずにただ太陽の熱を浴びている感じがじわじわと伝わってきます。すごい、なんか読んでるだけで暑い。お茶が即座に蒸気になりそう。自分が出したタイトルですが、わたしが詠んだらもっと軽い作品になってしまったんじゃないかな、と思います。
少し脱線しますが、発行後に奈月さんとこのタイトルのことを話していて、「テトラポット」の解釈のことが話題になりました。わたしは最初からこれを正式名称「テトラポッド」の誤読としてタイトルに組み込みました。皆さん、あれ、本当はテトラポッドって言うんですよ。ドなんですよ。で、今回このタイトルで見ると、「お茶」というワードと並べたことで「(ティー)ポット」な感じに捉えたり、三角のティーバッグのイメージが浮かんだりするということを話していて初めて気が付きました。あと、奈月さんは「濁音の消失」の可能性も考えてくれたみたいで……!!すごいたくさん考えてくださってて嬉しかったと同時に申し訳なくなりました……!!
とても素敵に詠んでいただけたので、ぜひ読んでください~!

七波さん『え、まだ第三の目開いてないんですか?!』(タイトル提供:なべとびすこさん)
面白系タイトルに、正統派綺麗め短歌(とわたしは思う)を詠まれる七波さんが当たってしまった組み合わせ。わたしだったら面白側に寄って作ると思いますが、果たして七波さんは……?
すごいです、全然面白には寄ってなかったです。このタイトルでこれ詠める……?!って感じでした。「あなた」の少しミステリアスな感じがぞくぞくきます。このタイトルが「あなた」がふと言った言葉だと読んだら、ほんとこわいです。(そういう読みが正しいのかはわからないんですが)
それでもミステリアスだからこそ惹かれるというか、知りたいなって気持ちになる連作でした。

伏屋なおさん『何度でもふんどす』(タイトル提供:泳二さん)
まず、このタイトルすごく泳二さんが持ってきそうですよねえ。ふんどす #とは って感じです。さらっと面白いこと言ってく感じがとても泳二さん。そしてそんなタイトルをどうするかと思っていたのですが、なるほどそうなったか!という感じです。ぜひご自身の目で確かめていただきたい。
最初は何気ない日常のほほえましい場面……だったのですが、最後ぐっと胸にくるものがあります。同じ言葉を使っているのにな……。すごいです。

松尾唯花さん『蟹をひたすらひっくり返す』(タイトル提供:田中ましろさん)
これも当たったら難しそうだなあと思っていたのですが、(実際苦労されたかは別として)全然乱闘の痕跡(?)がなくて「えっすごい!」ってなりました。わたしだったら六首揃えたところで絶対しっちゃかめっちゃかになる……。
蟹にまつわる六首、それぞれがいいです。四首目が面白くて、リズムも好き。そして六首目が、意味こそわからないものの面白くて好きです。このタイトル、あらためてキャッチー。


さて今回はこのへんで。次も好きな作品の感想が書けたらと思います。たくさんの作品が載っていて楽しいぞ……すごいぞ……。ましろさんいつもありがとうございますの気持ちです。

『歌人のふんどし2018』の話1

田中ましろさんのネプリ企画「歌人のふんどし2018」を読みながら……。今日はタイトルについての話です。

この企画は、人のふんどしで相撲をとる……「他人がつけたタイトルで連作を詠む」という企画です。今年でもう三年目、夏の恒例となりつつあるのではないでしょうか。
http://www.kokoiru.com/fundoshi2018/
わたしは前年に引き続き二度目の参加でした。

考えたタイトルは参加者みんなに見える場所に投稿されていくのですが、その時点から「これは当たりたくないな……」とか「これはぜひ詠みたいな……」とかがはっきりわかってきます。この時の「当たりたくない」というのは、「このタイトルの歌を作れる気がしない!」と感じるタイトルなわけです。そしてそれは同時に、「他の人がどう詠むかはすごく見てみたい」になるわけです。「詠む」側からしたら地獄かもしれないですが、「読む」側からしたらめちゃくちゃ面白いんですね。

わたしが当たったタイトルは、西藤智さん提供の『深海八千メートルの朝焼け』でした。
参加者が161人ということですべてのタイトルを確認していたわけではないのですが、このタイトルはお世辞じゃなくいっちばん気になっていたタイトルです。詠みたい、って思っていました。ご存じの方や気付いている方も多いかと思いますが、わたし、海というモチーフに大変弱いのです。しかも朝焼けって!なんて綺麗なタイトル!
他には
・『パンダコパンダハンダゴテ』(タイトル提供:加瀬はるさん)
・『マッコウクジラの憂鬱』(タイトル提供:木蓮さん)
・『ある朝起きたら、利き手が逆になっていた』(タイトル提供:とわさき芽ぐみさん)
あたりが気になっていたような気がします。わたしはパンダコパンダがめちゃくちゃ好きで、クジラにとても惹かれている、左利きなんです。右利きになれたらめちゃくちゃ便利で感動しちゃうよ!!!!!

ちなみに当たりたくないと思っていたタイトルは、
・『〈湖畔のアスパラガス工場〉事件』(タイトル提供:河村壽仁さん)
・『童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日』(タイトル提供:佐藤涼子さん)
・『喫煙推進株式会社』(タイトル提供:宗谷燃さん)
・『忖度』(タイトル提供:小川窓子さん)
・『探偵/六首からなる四部作』(タイトル提供:雀來豆さん)
あたりです。なのでこのへんは当たった人がどう詠むのか読者として楽しみでした。(当たっていないからこその他人事)

タイトルが決まって、わたしの考えた『テトラポット熱いお茶』というタイトルは奈月遥さんの元へ。奈月さんは、未言と言って綺麗な造語をたくさん作って、それで短歌を詠むなどしていらっしゃるので、「こんな捻りも詩情もない単純な単語を並べたタイトル……!どう作品にされてしまうのか期待大……!」という感じでした。

その他にこの組み合わせが気になる!と思っていたものは以下の組み合わせです。
・千原こはぎさん『妻(さい)のある人』(タイトル提供:せきさん)こはぎさんがこのタイトルなんて合わないわけがないじゃん、ジャストフィットふんどしじゃん、って絶対誰もが思った組み合わせだと思います。大本命でした。
・七波さん『え、まだ第三の目開いてないんですか?!』(タイトル提供:なべとびすこさん)これはものすごくなべさんが持ち込みそうなタイトルだと思ったんですけど、よりによって!七波さんに!作風が違いすぎる!どうなる!とめちゃくちゃ(勝手に)応援していた組み合わせでした。
やっぱり作品とか作風を知っている人に対して「合う!」とか「普段つけない感じだから大変だろうな……」と思うことが多かったです。


今日はここまで。作品の紹介まではできませんでしたが、次から少しずつ読んで、気になる作品の感想を書けたらと思います。

西日本豪雨義援金

#流れ星ふたたび 第二夜の参加者数に応じて義援金額を決めるというもの、本日振り込んできました。
参加者19人×500円……というのが最初の予定金額だったのですが、参加者が想定していたよりも少なかったため、19人×1000円=19000円……だと中途半端だなと思ったので多少上乗せし、2万円にしました。結局参加者数関係なくなりましたが……。

微力ではありますが、必要とされる場所で、使われるべき使い方をされますように。


さて、ついでなのでもうひとつ。今回はネットプリント配信だけでなく、足跡書館に登録する、というのがわたしの企画では初めての試みでした。というよりも、いつもできていなかったことがようやくできた、という思いです。いつも完成してから「参加者さんたちに確認とりわすれた!」という感じで……。足跡書館に上げますよ、PDF配信しますよ、と告知していないものは上げられないので……。
ネットプリント配信は期間限定だしそれはそれで楽しいのですが、コンビニがすぐ行ける場所にあることが前提で成り立っています。が、わたしの企画は、そうでなくても読めるような、もっと開かれた企画でありたいなと思っています。今回ようやくそれを忘れずに告知できたのは、今回の西日本豪雨が背景にあったからでした。
わたしには、現地の様子は、報道されている部分しかわかりません。ネットプリントで大前提とされているコンビニの様子が、まったくわかりませんでした。なので、コンビニで配信しても届かない人がいる可能性を思い、足跡書館に登録することを前提としました。足跡書館のPDFは期間限定でなく、ずっとそのままにしておきます。

ということで、今後また企画をやることがあっても、足跡書館に置いていくつもりです。告知を忘れなければ、なんですが……!


以上、報告とちょっとしたお話でした。

#流れ星ふたたび 第二夜 発行のお知らせ

過去作ネプリ「#流れ星ふたたび 第二夜」ネプリ登録/足跡書館へのアップロードをしました。

今回は前回と違い、Twitterに発表した歌でなくても、それどころか実は新作でも可というカオスなネプリになりました。


セブンイレブン 84165855(~8/15 23:59)
○セブン以外 TALY8PL4UW(~8/16 16:00頃)
・A3白黒で1枚(20円)
・両面印刷、2枚を1枚などの設定はすべて「なし」
―――コンビニ配信は終了しました―――


○また、今回は足跡書館に登録しました!こちらに期間はありません。PDFファイルをダウンロードできるので、紙で出力しなくてもいいという方や、おうちにプリント環境がある方はお金もかからずいいかもしれません。
https://t.co/Obk9GBvgzC


参加者はわたしを含めて19人です。ネプリ企画に初めて参加するという方も数名いらして、ネプリ処女厨(言い方がひどい)のわたしは躍り狂いました。その方々も含め、参加者の皆様本当にありがとうございました(/_;)/~~

たくさんの方に楽しんでいただきたいです。よろしくお願いします。



今回は参加者の人数でたかはしの西日本豪雨義援金額を決めるのも勝手に同時開催していたのですが、こちらも8月31日までに必ず!振り込みして報告します。(地元の新聞新潟日報に載っていた振込先に送ります)
―――以下8月10日追記―――
義援金を振り込んできました。ブログ記事はこちら↓
nashkrkr.hatenablog.com