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『女ぎらい――ニッポンのミソジニー』(上野千鶴子/紀伊國屋書店)

『女ぎらい――ニッポンのミソジニー』(上野千鶴子紀伊國屋書店)読了。とても面白かった。(ネタバレ等内容に触れる記事ではありません)

女ぎらい――ニッポンのミソジニー

女ぎらい――ニッポンのミソジニー

 

大学時代、専門科目でもなんでもない「女性学」という授業を取った。大教室で、学部関わらず多くの学生が取っていた科目だった。大体そういう科目って楽に単位が取れるもの……なのだが、この年の「女性学」は違った。外部から通う講師の授業はとてもわかりにくかった、にもかかわらず厳しくて、わたしも多くの友人たちも単位を落とした。

この本を読んでその授業を思い出したのは、「この単語あそこで聞いたな」とか「この学者の名前、授業で出てきた覚えがあるな」とか思いながら読んだからだ。その授業ではプリントが配られることも教科書や参考書が提示されることもなく、板書だってろくにされていた覚えがない。講師がただ喋る。しかも、ある程度知っているよね?というところから話し始めるので、当時のわたし(たち)にはちんぷんかんぷんだった。当時のわたしは「ミソジニー」も「フェミニスト」も知らなかった。

大学時代のあのときからこの本に出会い、理解できていれば良かった、と思う。でも出会わなかったし、理解できたとも思えない。いま、この本を理解できるわたしになれていて良かったと思った。

喪服の話

大学に入学するとき、いつ何があるかわからないからと、母が喪服を買ってくれた。デパートに行って一緒に選んだ。あれから8年、幸せなことに、まだ一度もそれを必要としたことがない。/ずっとしまってあって、引っ越しのたびにこんなものもあったなあという気持ちにすらなるのだが、よく考えたらまだ着られる状態にあるのか、いざというときに意味があるのかと思っていた。/見るたびにそう思っていたので、ついに着てみることにした。/もう結論しか書くことがないので書くと、着れた。ぴったりサイズだった。おかしいなあ、少し痩せたと思っていたのだけれど。こんなデザインだったかあ、とは思った。こんなことを言うのも変なのだけれど、可愛かった。可愛くて、このデザインのワンピース、普通に欲しいなあと思った。さすがにこれは普段着にはできない……かなあ?でもすごくいいなあ。緑や青だったらなあ。/そんなこんなでしばらくはまたほったらかしていても大丈夫だろうと思う。っていうメモでした。

『みずつき8』を読むそのに

瀧口美和さんの「水音」。どの歌も……!好き……!!!!!

一首目、なくなくなくと続いて「泣く」に着地する感じがすとんと心に響いて、ただ泣いている事実だけが残る感じ……。うーん、上手く言葉にできない。意味としてはなんで泣いているのかとかはわからなくて(水に色がなくて味がなくて音がなくて泣いているなんてことはないと思う……)最後まで読んでからもう一度読むと、湧き出ているのは涙なのかなとは思うんだけど。味がないかというとしょっぱい(とよく表現される)けど、音もなく泣いているっていうのも実際100%無音だなんてことはあり得ないし、ほんと泣いているっていうだけ、それだけの状況、事実が際立つ感じがする。

二首目、サントリーによると( https://mobile.suntory.co.jp/eco/teigen/jiten/science/09/?transfer=pc_to_mobile )体の80パーセントが水っていうのは胎児~新生児の間くらいらしいけど、死産とかだとは特に思わなかったんだよなあ。とりあえず、成人にしてはだいぶ水分多目だけど、個人差(の範囲内とも思えないけど)として、「きみ」の個性、と思って読みました。そんな個性を持つ人だから一緒にいたかった。個性って一緒にいたかった理由としては強いですし。で、一首目ではなんで泣いているのかわからなかったけど、ここで「一緒にいたかった」ってなっていることから一緒にいられなくなった、お別れをした、ってことがわかります。

三首目、ここではっきり「別れ」っていう言葉が出てくるわけだけど、この歌かなり好きですね……。別れ話の沈黙に雨の音だけが響いているのを感じる。出会ったときも雨だったなっていうのを思い出している、と読みました。出会いに思いを馳せながら別れていく。でも例えばこれを死産読みに戻したらまた変わってきますよね。病院での沈黙。妊娠が発覚した日も雨だった。でもやっぱりそう考えると「懐かしむ」っていうのはちょっと優しすぎる感じがするから、違うと思う……。

四首目。これ全部の句が「うた」で始まっていて、言葉遊びが面白いなと思った。最初気が付かなくて、なんでこんなにリズムがいいんだろう?って考えてしまった笑。この歌だけ一連の中で少しのほほんとした雰囲気。

五首目。踝が濡れるっていうのはどういう状況かなあと思って、しかもそれは「きみ」によって、という感じなので難しかったけど、これまでの感じから踝が濡れるくらい泣いている、そんな失恋、それくらい「きみ」のことが好きだった感じ、と読みました。「僕の涙」読み。……それかちょっとせくしゅあるな歌なのか……?とちょっと頭をよぎったので一応書いておきます。

六首目、この歌も好き。溺れてたっていうのは比喩だと考えていて、落ち込んでいたり、生きづらかったりとかかもしれないけど、とにかく主体のことを「きみ」は救ってくれた。そんな人だったからこそ大恋愛というか、本当に好きだったんだろうなって今までの歌とも繋がる。でもここでまた死産読みに戻すんだけど、確かに胎児って羊水の中にいて、それを泳いでいると捉えればこの歌と重なるところがあって。でもこの歌の下の句って、自分を振った相手に対しての恨みっていうかちょっと見返してやりたいみたいな気持ちを感じるから、やっぱり死産というわけではないんだと思うんだよな……。

ということでカップルの別れの歌として読んでとても好きでした。「きみ」について、比喩みたいな、抽象的な表現しかされていないところがいいなと思っていて、読んでいるこっちとしてはどんな人か全然わからない。どんな日々を過ごしたカップルなのかも全然わからない。でも主体が相手のことを本当に好きだったことがわかる。あと、「きみ」がどんな人か気になって、読んでいるこっちもなんとなく惹かれる。そんな連作だと思いました。

『みずつき8』を読むそのいち

6月も終わってしまったしとっても今更なんですけど、『みずつき8』を読んでいます。書きたいことを少しずつぽつぽつ。タイトルにそのいちって書いちゃったけど続くかは不明。

がねさんの「ぱられる」。みずつきはそれぞれの歌が水分を含有(?)しているのが条件なわけですけど、この作品、もしかしたら連作というより寄せ集めなのかもしれないんだけど、それぞれの歌の水分が感情を表している、というか、感情を「持っている」と言っちゃっていいんじゃないかなって感じ。短歌でなくても文学って、ものに感情を託すことがあると思うんですけど、それが上手いなあっていうか。主体、詠み手、人間側の感情がはっきり書いてあるわけではないけれど、雨の動きとかに感情が見えてスゴイ。そしてどの歌もひょ~~~~~すき~~~~~って感じ……。あと全体的にカメラワークの上手な歌って感じがします。カメラワークも上手くて、台詞のないシーンだけど感情が伝わってくるとか、なにそれ映画か漫画か何かじゃん。最高。ってなりました。個人的には主演に松坂桃李くんを持ってきてイメージしたら楽しかったです。

2019年6月自選5首

靴を脱ぎできそこないのおきあがりこぼしのようになる午後十時(うたの日/題『起』/2日)

この夏の予定について燦々とあなたが手話で咲かす向日葵(うたの日/題『両』/3日)

日の丸の正しい赤を選べないままでまどろむ令和のひなた(Twitter/5日)

中指でリズムを刻む癖があるきみは偉人の恋に詳しい(うたの日/題『好きな指』/7日)

人びとの日々を見上げて焼きそばが清掃員を待つだけの朝(Twitter/流霞さんへの返歌/10日)

 

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6月は30首でした。結構好きな歌が多くて(自画自賛)5首に絞るのはなかなか大変でした。新聞歌壇への投稿もそこそこしました。載るといいなー。そして、ついに結社に入会しました!コスモス短歌会です。月詠も初めて出しました。9月号くらいから載るはずなので、どきどきしています……。

言葉にできない

絶版になっている『ターミナル』の詩はすべて『現代詩文庫平田俊子詩集』に収録されていると平田さんご本人に教えていただき(ついったらんどというのはすごいところです……)書庫から出してもらって借りてきた。買う気はあるけどとにかく早く読みたくて……!

平田俊子詩集 (現代詩文庫)

平田俊子詩集 (現代詩文庫)

 

「うさぎ」という詩が読みたくて、『ターミナル』が読みたかった。受け取ってすぐに、まっさきに「うさぎ」を開いて、あーーーーーもう、すきだ、なにこれ、すきだ。鼓動が早まる感じがする。汗までかいてきそう。でも雪原のひんやりした空気を感じて、脳内が真っ白になる。でも生々しくて、血飛沫を感じて、いとおしくて、心が震えてしまう……。全人類読んで……。読めばわかるよ……。

文字列だけなのに、それだけなのに、伝わってくることがとても多い。白のイメージと赤のイメージのコントラスト。冷感。空気感。呼吸。鼓動。それから感情。うまく言葉にできないというか、言葉にしすぎても良くないと思うからこんな感想しか書けないんだけど、ぜひ読んで、なにかを感じてほしい作品です。本当にすごい。大好き……。家に帰って他の作品もたっぷり堪能します……しあわせ……。

『夏みかん酸つぱしいまさら純潔など 句集「春雷」「指環」』(鈴木しづ子/河出書房新社)

図書館でまた本を借りた。

夏みかん酸つぱしいまさら純潔など 句集「春雷」「指環」』(鈴木しづ子/河出書房新社

夏みかん酢つぱしいまさら純潔など

夏みかん酢つぱしいまさら純潔など

タイトル作を『あかぼし俳句帖』(原作:有間しのぶ/作画:奥山直/小学館ビッグコミックス)で見たことがあったので手に取り、読んでいたところだった。


そして昨日本屋を歩いていたら、文庫化され出版されていることを知った。それも今月、つい先日出されたばかりのようで、タイミングが良すぎてびっくりした。文庫版には川村蘭太さんによる「鈴木しづ子追跡」なども追加収録されているようだった。追跡?と思った人にはぜひ読んでみてほしい。わたしもいままではこの句以外まったく知らなかったが、鈴木しづ子という俳人が気になり、惹かれ、知りたくなってしまった。


ちなみに『あかぼし俳句帖』も面白い漫画だと思うので興味があればぜひ。冴えないサラリーマンが俳句を趣味にしてお勉強していく話です。全6巻。

あかぼし俳句帖 1 (ビッグコミックス)

あかぼし俳句帖 1 (ビッグコミックス)