すきによんでねブログ

たかはしりおこのなんてことないブログ

自選30首

ドアノブに潜むバイ菌(わたしだって誰かに触れられたかっただけだ)

本当のわたしはここよ わーーーーーって扇風機にだけ見せる表情

「ほら、黄金色だよ」なんにもない町もあなたといればきんぴかになる

ひらがなで「りお」ってわたしを呼ぶ声をピアスに変えて揺らしていたい

怖くないあなたがつくる波ならば 小さな明かりの下目を閉じる

さよならの後にくるくるむく林檎 ちぎれるなちぎれるな赤色

きみが弾くギターの音で東京のライブハウスに海が広がる

王様になってもいいよ気を遣いすぎるあなたにかんむりを編む

砂浜でふたり日本の輪郭のほんの一部をなぞるお散歩

食道を撫でられていてわたしってたくさんの愛からできてるね

この街のわたしもわたし気が付けば住所を何も見ないで言える

春の日に「蛍の光」は波となりうずまき管を正しく進む

初めての海が見たくて信号の中のおじさん歩き続ける

背骨じゅう糸で吊られて恐竜は正しい姿勢を強いられている

ひとつふたつみっつよっつととめどなく流れくる桃 いのちまぶしい

世界中のコンセントから延びている延長コードの先にオーロラ

虹よりも明るい放物線 まぶしい 小笠原道大のホームラン

なめらかに端からほどけてゆくちょうちょわたしたちの関係が変わる日

ショーウインドウのぞくみたいに「東京」のかぎかっこのなかキラキラしてた

屋上の扉はいつも締まっててパイナツプルでさわれない夏

偶然を奇跡と呼べば輝くね そしてあなたの花嫁になる

"胎児仮死"と強く書かれた母子手帳必死に生まれてわたしは生きる

生きるのが下手なわたしと歌うのが下手なあなたでちょうどまんまる

おとなって涙を我慢すること?にいいえと答えてくれるカフェオレ

かーてんをゆらすきらきらぼしのおとあるぷらぞらむはくすりのなまえ

しあわせになるようつけられた名前にかがやくハッピーエンドください

「死にたい」と検索をしたその先で誰か両手をひろげていてよ

海のない町ではじめて過ごす夏(ひかれあおいろ)サイリウム折る

葉桜と花火 静かに死にたいと笑うあなたの手を離さない

海が凪ぐ わたしはきみの犬だから名前を呼ばれただけで嬉しい


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歌歴はそこそこのわりに結社所属歴がなく、インターネットの片隅でひっそりと短歌を楽しんでいます。あとは投稿もいろいろしているのですが、今回はそういうの入れませんでした。
「君」を「きみ」に、「私」を「わたし」に直すのだけはしました。
詠んだ歌、発表した歌の管理をきちんとしていないので、まずうたの日を開き、Twitterで自分の過去作を検索し、ネプリなどを掘り返したのですが見つからないものもあったりして、かなり大変でした。

30首選んでみて思ったのは、5点満点で読んでいったとき5点だと思える歌がとても少ないということでした。30首もなかった。ので、次点かなって歌がたくさん入りました。まだまだだなあ。まあ4点の歌も好きなんですけど、この30首で決まりだ!間違いない!バァーン!みたいなのがなくて頑張らなきゃなあと。しかも4点の歌もそんなに多くなかった気がします。でもとりあえずわたしはこんな歌詠みますよーってことはわか……るか……?伝わればいいなと思います。

あと今さらですが順はめちゃくちゃ不同です。作った年月日順ですらないです。全然。並び方おかしいなって何回読んでも思うけど、連作を作るわけじゃないからそのままにしておきます。ごたごた感がすごい、バランスが悪い……。

あ、あと、こないだ2018年上半期自選の記事を書いたので、2018年に詠んだ歌は除きました。あれらを含めたら少しは変動がありそうな気がします。